名前のない新聞 1989.2月号
「縄文杉に火をつけよう〜詩人サカキナナオにきく」


 放浪の詩人とでも言ったらいいのだろうか。日本のヒッピーの草分け的存在である「部族」の顔として名を知られ、しかも常に定住せずに地球上のあちこちを旅し、マスコミやコマーシャリズムを近づけないが為に一般大衆の目に触れることもなく、生きる伝説上の人物といった雰囲気を漂わすサカキナナオにインタビューする機会があった。10数年前、第1期名前のない新聞の時、そのころ諏訪之瀬島の問題でヤマハ・ボイコット運動を呼びかけていたナナオにインタビューしたことがあったが、時代の波に流されず、自分の足でこの地球を歩き続けている存在感は全く変わっていなくて嬉しかった。
 詩はへみたいなもんだと言うナナオだが、詩の朗読は力強く暖かくウィットに富み、聞く人に何かを気づかせてくれるインパクトを持っている。さてナナオの友人で今回の来日ではナナオが案内して回ったというアレン・ギンズバーグも素晴らしい迫力ある朗読を聞かせてくれたが、そのアレンの東京での集まりの日、晩秋の深大寺植物園を歩きながらナナオに話を聞かせてもらった。


ーーアレン・ギンズバーグとは古いつきあいらしいですね。
ナナオ■古いね。63年ですか。京都で会った。その頃はゲイリー・シュナイダーが京都に住んでいて、アレンと一緒にインドヘ行って、新宿にナナオってのがいると僕のうわさを聞いて、そして日本に来たんだ。
ーー今年(88年)の6月にサンフランシスコで白保のサンゴ礁を守れという詩の朗読会をやりましたね。
ナナオ■あの集まりの中心になったのはアレンなんだ。たまたま彼の誕生日で、面白かった。それが契機になってアレンの座標が少しズレてきているんだ。もっと水のことや森のことに目が向き出した。山を歩きたいと言い出してね。
ーーナナオは最近アメリカにいる方が多いようですが、それは何か理由があるんですか。
ナナオ■治安状態は決して良くないけど、居心地がいいんだ。精神的な光りを求めるとか、あるいは新しいビジョンを出すことについて、アメリカの若い人たちは、日本人よりももっとシーリアスじゃない? 僕らが詩を読んでも反応がある。ある時、ニューメキシコ州のサンタフェって街で僕の詩の朗読が終った後、5人の人がその場で即興の詩を書いて持ってきた。興奮したわけ。眠っていたものが呼び起こされたんだ。それはやっぱり嬉しいもんでさ。詩をかく者にとっては本望じゃない? 勲章をもらったような感じがしたよ。
ーーナナオはやっぱり自分のことを詩人だと思ってますか?
ナナオ■とんでもない。僕はフーテンでいいし、ルンペンでいいし、詩人だなんて言われたら、ちょっと待ってくれと言いたくなる。僕は絵も描きたいし、歌も作りたいし、あるいは畑をやりたいし、そういう幻想ばっかり持っているよ。人間というのは無限じゃない? 一つの枠に閉じ込めること、ないんだよ。
ナナオ■東京に来て、この空気の悪さには参った。もうノドはやられるし、目は痛くなる。鼻はおかしくなる。ちょっときついね。国分寺でさえ、午前中はまだいいけど、夜はものすごい光りと排気ガスで歩けないね。ゆうべももうくたびれきっちゃって‥‥たいてい5時間か6時間の睡眠でもつんだわ。ところが8時間くらい寝ないともたない。そんなバカなはずないと思ってんだけど。
ーー田舎に住んでる人がたまに東京に来ると、みんな言いますね。
ナナ才■東京に住んでると慣れっこになってるからね。恐らく浅い呼吸をしてるんだ。そうやってごまかしてる。僕は腹式呼吸だもの、深く入っちゃうわけ。それだけ毒をいっぱい吸ってしまう。僕は深〜い呼吸をする習慣があって、手足の先々まで酸素を入れるような訓練をしてしまったから、逆に弱いんだよな。これには困っている。
ーーそういう呼吸の仕方で、だいぶ人生変わってくるような気もしますね。
ナナオ■今度、東京に来て非常に感じていることは、やっぱりみんな外に出た方がいい。東京は何かほんとに希望がない、ほとんど悪魔的なものを感じるくらいだね。底のほうで、何にも信頼できないような地震のようなものが起こってるんじゃないかっていう気がする。つまりこの内容のない文化、政治なんかムチャクチャでしょ。サギ師と泥棒だらけのすごい風景じゃない。まともに新聞読む勇気ないもの、あまりに恥ずかしくて。お金の取りっこやってる連中が政治をあずかってるなんて信じられる? しかも皆さん税金払ってるでしょ。そんな単純なことが、もう分からなくなっているんだ。これは結局、僕らが地震を起こさなきゃしょうがないのかもしれない。文化的な地震を起こしてガタガタ揺さぷるしかないんじゃないか、ここまで崩れたものは、もう壊してくれと。でも、僕らはテロリストじゃないから、平和な形の戦いをやるしかない。そこで武器になるものは、それこそ音楽であり、詩であり、絵であり、映画やドラマなわけだ。
ーー文化だけでなく、自然の破壊もひどいですからね。
ナナオ■自然がダメになるから文化もグメになるのかもしれないし・‥・野生がなくなったからね。まずサルが減った。それからマムシが減った。当然、森なんかありゃしないじゃないか、日本には。寂しい風景だ。
ーー北海道もですか。
ナナ才■北海道もやられた。九州なんか惨慣たるものだね。
一一屋久島もロープウェイを作ろうとする話がありますね。
ナナオ■あれは恥ずかしい話だ。僕は屋久島へ行こうかと思っている。そして縄文杉に放火しようかと思っている。それが一番いいんじゃないですか? 縄文杉がなくなれば、誰もそんなバカなことを考えなくなる。誰かの手が後ろに回るかもしれないけど、あそこにロープウェイかけるよりはいいんじゃない? 一本の木で済む方が。
一一それは過激ですね。でも結果的にはそのほうがいいって気もします。
ナナオ■“縄文杉に火をつけよう”という詩を書いてもいいんだよな。
ーーその方が穏やかですね。で、誰かがその気になるかもしれない。
ナナオ■今の日本は縄文杉くらい犠牲にならなきや解決しないんじゃないかな。
ーー今は縄文杉が特別であって、それをみんな見に行きたいということになってますね。
ナナオ■そんなバカなことはないんだ。全体の自然を考えなきゃ。僕はね、観光という言葉を許さないの。自分が作ったものでもないのに食い物にしているだけじゃないか。あんな恥ずかしい商売やめろと言ってんだ。もっとちゃんとしたことやんなきゃ。縄文杉がそこまでになるために、どれだけの犠牲が払われているかってことを考えなきゃならない。生態系全体を見なければ。

 さて、話はこの他にもいっぱい聞かせてもらったのですが、残念ながらスペースの都合でこのへんまでで終りとします。なかなか都会には現われない人ですが、もしナナオの詩の朗読会のうわさを聞いたら、ぜひ行って彼の存在を味わってみることをお勧めします。なお北海道のカズ(大村和喜=N0.3に彼のインタビュー掲載予定)と一緒に作ったテープ「地球Bからのメッセージ」等もお勧めです。


このインタビューの全文がこちらから読めます。


 

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